8月10日横浜矢向に実に66名のマジックプレイヤーが集まった。
1週間前までは30人前後の事前登録者数により、まったりとした大会になることが予想されていたが、蓋を開けてみれば66人という草の根大会としてはなかなかの規模の大会をMDNC#1として執り行うことができた。
直前の禁止改定・即日執行により先日のプレイヤーツアーから、ひと息つく間もなく、再び混沌に満ちたスタンダードが幕を開けた。
再び、新環境での構築を余儀なくされたスタンダードプレイヤーにとって、MDMC#1は今後の試金石と呼ぶには十分な規模のリアルイベントだっただろう。
とは言え、それはMTGアリーナであっても同じ話。
むしろ、圧倒的な対戦効率によって最適解を見つけたプレイヤーも多いのではないだろうが。
しかしながら、我々の予想を大きく裏切るメタゲームが当日は繰り広げられた。
まずは、こちらの図を見ていただこう。

スゥルタイランプを有する緑系ランプがトップメタであるものの、当初より囁かれていた緑系ビートダウンが実数としてまず少ない。
また、ビートダウンへの強さを誇るオルゾフスタックスも見当たらない。
これは一体どういうことだ?
赤系アグロが多いのは、環境初期に強いデッキタイプであるため2番手であることは納得感がある。しかしながら、青系コントロールとはなんだろうか。
「時を解すもの、テフェリー」の退場により、代表的なアーキタイプである青白コントロールは退場したはずだ。
使用したコントロールプレイヤーの心理はこうだ。
「テフェリーがいなくなったから、コントロールを使おうと思った」
そう。つまり「時を解すもの、テフェリー」はコントロールデッキにはなくてはならない必須パーツではあったが、青白を有するデッキ以外のコントロールの可能性を著しく後退させた存在でもあったのだ。
コントロールを使うプレイヤーの全てが青白系コントロールを好むとは限らない。
近年頭角を現したグリクシス系プレイヤーにとって、インスタントタイミングでの介入を拒む「時を解すもの、テフェリー」は最大の癌だ。
その結果、ビートダウン優勢&スゥルタイランプが最大勢力との下馬評を持ってしても(いや、だからこそか)コントロールを選択するプレイヤーは多かった。
そして、その多くがMDNC#1でtire2以下に後塵を拝した緑系ビートダウンを駆逐していったのだろう。
そして、最大勢力となった「その他」にカテゴライズされたローグ達である。
アーキタイプの規格を超越した彼らとは一体どんな存在なのだろう?
まずは、全アーキタイプの集計を見ていこう。

だいばぁしてぃ(はなほじ
・・・。
突然脱力感に襲われたが、多分気のせいだ。
実に多種多様なデッキの数々。
MDNCは参加費2000円と、一般のMTGイベントとしてはやや高いしカジュアルイベントとして募集をかけている訳ではないにも関わらずこの多様な面々を見てくれ。
最終的な集計が終わったのはスイスラウンド終了間際ではあったが、これは波乱を期待させるイベントであると確信した。
そして、その波乱は起こった。
トップ8に残った分布を見てもらいたい。


最大勢力のスゥルタイランプこそ3人のトップ8を輩出しているが、彼らが決勝の土を踏むことはなかった。
それ以外のデッキといえば、赤単は2番手候補と言えど、他のデッキはいずれも使用者が4人~1人ということで、ワンデートーナメントとはいえ、デッキそのものの力強さを感じざるを得ない。
デッキの詳細に関しては、MDNC#1トップ8デッキリストに掲示しているので参考にしてもらいたい。
その強さの秘密をMTGアリーナで試してみてはいかがだろう。
決勝はアーキタイプこそ違うものの、お互いにクロックパーミッションという筆者のとても好きなデッキタイプの熱い対戦となった。
また、ここでもうひとつ、特筆すべきデッキについて挙げておこう。
MDNC#1特別賞となる「MDNCデッキ賞」についてだ。
当日の参加者は、すでに承知の通りだと思うが、このデッキは惜しくも決勝は逃したものの見事トップ4という輝かしい成績を収めた「ミヤタケンタロウ」の「ゴジラロータス」だ。

このデッキを私は彼のSE入りを目指すバブルマッチで初めて見ることになるのだが、この独創的かつファンデッキの枠を超え実戦においても十分通用する構築力に感服した。
また、デッキのコンセプトそのものがダイナミックな為、MDNC#1において間違いなく目玉のデッキだった。
残念ながら、現スタンダード環境は数ヶ月後にはローテーションする運命にある。
それでも、誰しもが一度は考えゴミ箱に捨ててきたアイデアの一つ一つを、彼は見事ひとつにまとめて強力なデッキへと昇華させたのだ。
彼のデッキの凄いところは、ダイナミックなカードもさることながら「厚かましい借り手」や「砕骨の巨人」など、しっかりと構築級の主役達を押さえとして起用している構築精度の高さだ。
そう。彼のデッキは私から見ると歴代のスタンダードデッキや消えていったデッキアイデアの集合知なのだ。
まとめ上げた編集力、あるいは調整力と言った方が良いのかもしれない。
しかし、そのまとめ上げられた形があまりに斬新な為、独創性を感じてしまうのである。
筆者は、今回の彼の構築を見て、改めて「ミヤタケンタロウ」という人間から目を離せなくなった。
彼は恐らく環境初期の不安定時期であることも織り込み、このデッキを組み上げぶつけてきたのだろう。
誰しもがゴミ箱に捨てたアイデアをひとつひとつ丁寧に拾い上げ、トップ8へ進出するデッキへと昇華させたのだから。
今後も彼が作り上げるデッキに注目していきたい。
最適化とはつまり、自分の頭で考えることを失ったテクノロジーの功罪である事を、良きエンジニアであれば誰しも気づいているはずだから。
PS,最後に今回のメタゲームブレイクダウン執筆に際し、当日ジャッジを勤められていたK.Kawazoe氏(@_____zoe_____)のお力添えが大きい点を付け加えておこう。